海や川に行く皆さんへ(水の安全に関する情報提供)

 慶應義塾大学体育研究所ではスポーツ庁の委託による「令和4年度令和の日本型学校体育構築支援事業」に採択され、慶應義塾幼稚舎を教育実践校として水難事故防止教育の確立に向けた実践研究を行ってまいりました。この研究を通じて水難事故の発生現場を視察してきました。

 

 水の安全に対する知識・態度・技術からなる総合的能力が必要であるというWater Conpetence(ウォーターコンピテンス=水の安全に対する総合的能力)の概念を基に水難事故防止教育を考えた際、プール等での水泳技術の習得のみならず、 自然水域での危険に関する知識や、危険と感じたら水に入らない勇気(態度)を養うことも重要であると考えております。

 今後同様の水難事故の発生を未然に防ぐため、必要となる情報を提供することも重要であると考え、ここに紹介します。

 

1,砂浜、河川敷等で運動した後、ライフセーバーがいない水域には入水しないこと

 陸上で運動した後、ほてった体を冷やすために海や川に入りたくなるかもしれません。

しかし、発汗による水分不足や足腰が疲れた状態で水に入ると、体が急な温度変化に対応できず、足などの筋肉がけいれんすることが考えられます。特に夕方は体の疲労がピークに達する半面、気温変化によって波風が強まり、また水温が低下することでこの傾向が一層強まります。また、大勢の人数が一度に入水すると、溺れても気づかない可能性が生まれます。

2022年6月25日午後6時頃に水難事故が発生した湘南ベルマーレひらつかビーチパーク(神奈川県平塚市)
砂浜でビーチバレーをした後に冷たい水に入ると足などの筋肉がけいれんしやすくなります。

 

2,BBQなどでお酒を飲んだ際は入水しないこと

 自然水域に入水する際の注意点は車の運転と同様と考えてください。つまり、初めての場所では慎重に行動する、体調が悪い時は無理をしない、そしてお酒を飲んだ際は水に入らない、などです。これからの季節は海辺や川辺でBBQをする機会が多くなります。初めての場所では土手が柔らかくなっており崩落する危険性があるかもしれません。濁った水では足をすくわれやすくなります。そして飲酒をすると安全を過信してしまい、水難事故につながりやすくなるのは世界共通の課題です。

 

3,常に安全を過信せず、危険を感じたらNOという勇気を持つこと

 水難事故が発生しやすい危険箇所は場所や季節、時間によっても変化します。特に集団心理で水に入る前に、みんなも水に入るから自分も大丈夫、という安全の過信は禁物です。これまでも説明してきた通り、水泳の技術は人それぞれであり、また体力や安全に関する知識も人によって異なります。危ないと感じたらみんなに周知して水に入らないように促す勇気(態度)も養いましょう。

 

有益な情報サイト

国土交通省:河川水難事故防止ポータルサイト
水の安全に関する様々な情報が集められています。

ライフセービング協会:守ろう!いのち 学び合おう!水辺の安全
海や川の安全をクイズ形式で学習することができます。

河川財団:安全な川遊びのために
安全に川で遊ぶための映像資料です。

 

水の安全に関する総合的能力(Water Conpetences)についての解説
水の安全に関する総合的能力解説のサムネイル

 

2021年の新型コロナウィルス感染時に,映像を見るだけでも水難事故防止に役立つと考え、
藤本秀樹教諭(慶應義塾幼稚舎)らと共に教材を作成しました。
水辺へ行く前に是非とも動画をご確認ください。

 ・安全水泳動画を見る前に → <動画をみる
 ・安全水泳ステップ① → <動画をみる
 ・安全水泳ステップ② → <動画をみる
 ・安全水泳ステップ③ → <動画をみる
 ・安全水泳ステップ④ → <動画をみる
 ・安全水泳ヘルプサイン → <動画をみる
 ・安全水泳概説 → <動画をみる
 ・立ち泳ぎの解説動画(過去のもの)→ <動画をみる

 

各地の水難事故防止教育,安全水泳教育,遠泳教育に関する情報を広く募集しております.
ご意見やお気づきの点などございましたらこちらまでご記入をお願い致します.

 

連絡先:慶應義塾大学体育研究所
准教授 鳥海 崇
bird @ keio.jp